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社会保険の加入届の出し方|新規適用届の手続き・必要書類・費用まとめ
法人は設立日、個人事業所は常時5人以上の従業員を雇った日から5日以内に届出義務。官庁手数料無料。健康保険・厚生年金保険新規適用届を所轄年金事務所に提出。未加入は過去2年遡って保険料追徴のリスクあり。
この記事でわかること
- 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入届が必要なケースと不要なケース
- 法人は設立日から強制適用。個人事業所は常時5人以上の従業員で強制適用
- 届出期限:適用事由発生日から5日以内
- 申請費用:無料(官庁手数料なし。社労士に依頼する場合は別途報酬が発生)
- 届出先:所轄の年金事務所(日本年金機構)
- 未加入時のリスク:過去2年遡って保険料追徴 + 6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 届出後に発生する定期届出(算定基礎届・月額変更届等)の義務
社会保険の加入届が必要なケース
健康保険法第48条および厚生年金保険法第27条に基づき、適用事業所となった日から5日以内に新規適用届を提出する義務があります。
強制適用事業所(必ず加入が必要)
法人(会社)の場合:
- 従業員数に関わらず、法人設立日から強制適用。代表取締役1人のみの会社でも加入必須。
個人事業所の場合:
- 常時5人以上の従業員を雇用する強制適用業種(製造業・小売業・建設業・通信業等)
任意適用事業所(本人申請で加入可)
- 個人事業所のうち5人未満、または非強制適用業種(飲食店・理美容業・農林水産業等)
- 被保険者となるべき者の2分の1以上の同意があれば任意適用が可能
重要 週30時間以上の従業員は通常の被保険者、週20〜30時間未満は短時間労働者(51人以上の事業所では加入対象)として加入義務が生じます。2024年10月以降、51人以上の事業所での短時間労働者適用が拡大されています。
社会保険加入が必要な業種ページ
未加入・届出遅延の罰則と追徴リスク
刑事罰: 健康保険法第208条第1号および厚生年金保険法第102条第1号に基づき、届出義務を怠った場合は6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される場合があります。
保険料の遡及追徴: 日本年金機構は、加入要件を満たすにもかかわらず届出をしていない事業所を発見した場合、職権で適用事業所として決定し、過去2年に遡って保険料を追徴できます(健康保険法第156条等)。
従業員の保険料の半分は事業主負担のため、2年分の追徴額は非常に大きくなります。例えば月給30万円の従業員1名で、年間の社会保険料(事業主負担分)は約53万円(健保+厚年の合計)。2年分では106万円以上になる計算です。
重要 「少人数だから加入不要」「後でまとめて手続きする」という認識は危険です。法人は設立日当日から、強制適用個人事業所は5人目の従業員を雇った日から5日以内に届出が必要です。
申請前の準備
1. 自事業所の適用区分を確認する
法人か個人事業所かによって、適用区分と強制加入の要件が異なります。
- 法人:設立日から強制適用。役員のみでも必須
- 個人事業所:業種と従業員数で判断。強制適用業種で5人以上なら必須
重要 個人事業主本人は厚生年金の被保険者になれません(法人成りすることで加入可能になります)。
2. 必要書類を事前に準備する
年金事務所に提出する書類は日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
- 「健康保険・厚生年金保険新規適用届」
- 「被保険者資格取得届」(従業員ごと)
- 「被扶養者異動届」(扶養家族がいる従業員分)
3. 法人の場合は登記簿謄本を用意する
法人の場合は「履歴事項全部証明書」(発行日から90日以内のもの)が必要です。法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得できます。
4. 提出先(所轄年金事務所)を確認する
所轄は事業所の住所で決まります。日本年金機構のWebサイト「年金事務所所在地一覧」で確認してください。e-Gov電子申請も利用可能です。
必要書類一覧
共通書類(法人・個人事業所共通)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 日本年金機構指定様式 |
| 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 従業員ごとに作成 |
| 被扶養者(異動)届 | 扶養家族がいる場合のみ |
法人の場合の追加書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 発行日から90日以内のもの |
個人事業所の場合の追加書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 賃貸借契約書または事業所の所在を確認できる書類 | 事業所の実態確認 |
| 労働者名簿または出勤簿 | 従業員数の確認 |
重要 事業所が登記上の住所と異なる場所にある場合、その所在を確認できる書類(賃貸借契約書等)の提出が別途必要になることがあります。事前に所轄年金事務所に確認してください。



届出書の記入で特に注意すべき項目
新規適用届の記入でよくミスが起きる項目:
- 事業所の種別:「法人」「個人」の区分を正確に記入。個人事業所の場合は事業主の氏名(法人名ではない)を記載。
- 事業の概要(業種):日本年金機構の業種分類に従って記入。業種によっては適用除外や任意適用の判断に影響します。
- 被保険者の報酬月額:資格取得届の「報酬月額」は正確に記載。標準報酬月額の決定に使われ、保険料計算の基礎となります。
- 資格取得年月日:採用日(労働契約の開始日)を記入。試用期間中でも試用開始日から加入が必要です。
重要 社会保険の手続きは社会保険労務士の独占業務(社労士法第2条)です。書類作成を外部に依頼する場合は、必ず資格を持つ社労士に委託してください。
申請の流れ(STEP1〜5)
STEP 1:新規適用届の準備(目安:1〜2日)
「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を日本年金機構HPからダウンロードし、事業所情報を記入。法人は登記簿謄本も準備します。
STEP 2:被保険者資格取得届の準備(目安:同時並行)
加入させる従業員ごとに「被保険者資格取得届」を作成。報酬月額・資格取得年月日等を記入します。同時に扶養家族がいる従業員の「被扶養者(異動)届」も準備。
STEP 3:年金事務所へ提出(目安:適用事由から5日以内)
適用事由発生日(法人設立日または5人目の従業員採用日等)から5日以内に所轄年金事務所へ提出。窓口・郵送・e-Gov電子申請に対応。
STEP 4:健康保険証の受領
提出後、数日〜2週間程度で健康保険証が各被保険者に交付されます。健保組合加入事業所の場合は健保組合から交付されます。
STEP 5:保険料の納付
毎月の給与から従業員負担分を控除し、事業主負担分を合わせて翌月末日(実際は納付書の指定日)までに納付します。口座振替も利用可能です。
費用と審査期間
| 項目 | 自分で手続き | 社労士に依頼 |
|---|---|---|
| 官庁手数料 | 無料 | 無料 |
| 社労士報酬 | なし | 約29,800円(事務所により異なる) |
| 手続き期間 | 適用事由から5日以内(法定期限) | 委託後1〜5日で提出代行 |
| 書類作成 | 事業主が記入 | 社労士が作成・確認 |
毎月の社会保険料(事業主・従業員負担): 月給30万円の従業員1名の場合(令和6年度・協会けんぽ東京支部の料率):
- 健康保険料(事業主負担):約16,305円/月
- 厚生年金保険料(事業主負担):約27,450円/月
- 合計事業主負担:約43,755円/月(年間約53万円)
事業主と従業員が折半で負担します。
社会保険料の計算方法
標準報酬月額制
社会保険料は標準報酬月額を基準に計算されます。標準報酬月額は実際の月収を等級表に当てはめたものです。
保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
| 月収(例) | 標準報酬月額等級 | 健保料率(協会けんぽ東京) | 厚年保険料率 |
|---|---|---|---|
| 約20万円 | 20等級(200,000円) | 10.00% | 18.30% |
| 約30万円 | 22等級(300,000円) | 10.00% | 18.30% |
| 約50万円 | 28等級(500,000円) | 10.00% | 18.30% |
※事業主と従業員が折半負担。健保料率は都道府県によって異なります(令和6年度協会けんぽ東京支部の場合)。
重要 算定基礎届(毎年7月)と月額変更届(報酬の大幅変動時)で標準報酬月額を随時見直します。見直しを怠ると過不足が生じます。
社会保険の加入届 詳細ページ
よくある失敗パターン5選
失敗1:法人設立後5日を過ぎてから届出した → 法人設立日から強制適用のため、設立翌日〜5日以内に届出が必要です。設立登記後すぐに年金事務所へ向かうか、電子申請を手配しましょう。
失敗2:試用期間中は加入不要と誤解した → 試用期間であっても、雇用の実態があれば試用開始日から被保険者になります。試用期間満了後の正式採用時ではありません。
失敗3:報酬月額を低く記入した → 標準報酬月額の届出を意図的に低くすると、算定基礎届で是正され、差額保険料を追徴される場合があります。正確な報酬額を記入してください。
失敗4:算定基礎届の提出を忘れた → 毎年7月1〜10日に提出が必要な算定基礎届を忘れると、標準報酬月額が前年のままとなり、過不足が生じます。カレンダーに必ず登録しましょう。
失敗5:労働保険(労基署・ハローワーク)との混同 → 労働保険(労災・雇用保険)と社会保険は届出先・様式・期限が異なります。社会保険は5日以内・年金事務所、労働保険は10日以内・労基署/ハローワークです。
短時間労働者への適用拡大(2024年10月以降)
2024年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されています。
適用拡大の要件(以下をすべて満たす場合)
- 週所定労働時間:20時間以上
- 月額賃金:88,000円以上
- 雇用見込み期間:2ヶ月超(事実上継続的な雇用と見込まれる場合)
- 学生でないこと
対象事業所
| 施行時期 | 対象規模 |
|---|---|
| 2022年10月〜 | 101人以上の事業所 |
| 2024年10月〜 | 51人以上の事業所 |
| 2026年10月〜(予定) | すべての事業所 |
2026年10月以降は、事業所規模に関わらずすべての事業所で短時間労働者への適用が義務化される予定です。
労働保険との同時手続き
従業員を雇用した場合、社会保険(年金事務所)と労働保険(労基署・ハローワーク)の両方の届出が必要です。
| 手続き | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金新規適用届 | 年金事務所 | 適用事由から5日以内 |
| 労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 雇用日から10日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 設置日翌日から10日以内 |
実務上のポイント: 社会保険の期限(5日)が最も短いため、まず年金事務所への手続きを優先し、その後に労基署・ハローワークへの手続きを行うことを推奨します。
届出後の義務(定期届出・変更届・資格喪失届)
定期届出(毎年必須)
- 算定基礎届(毎年7月1〜10日提出):4・5・6月の報酬実績をもとに標準報酬月額を改定
- 賞与支払届:賞与支給のたびに支給日から5日以内に提出
変更が生じた場合の届出
- 月額変更届:固定的賃金が大幅変動した場合(2等級以上変動時)
- 氏名変更届:従業員が婚姻等で氏名変更した場合
- 住所変更届:被保険者の住所変更(マイナンバー連携で省略可能な場合あり)
退職・資格喪失時
従業員が退職した場合は、退職日の翌日から5日以内に被保険者資格喪失届を提出します。健康保険証の回収・返却も忘れずに行ってください。
掲示義務
社会保険(健康保険・厚生年金保険)には、許可証のような掲示物の法定掲示義務はありませんが、健康保険事業の周知(保険給付の内容・手続き等を従業員に知らせる義務)が事業主に課されています。
電子申請(e-Gov)の活用
政府が提供する「e-Gov電子申請」を利用することで、窓口に出向かずオンラインで新規適用届を提出できます。
e-Govで対応している手続き(社会保険関連)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 被保険者資格取得届
- 被扶養者(異動)届
- 算定基礎届・月額変更届
- 被保険者資格喪失届
利用の流れ
- e-Govアカウントを作成(無料)
- GビズID(法人)または個人アカウントでログイン
- 「手続き名検索」で「新規適用届」を選択
- 必要事項を入力して電子署名して送信
e-Gov申請の場合、受付完了通知がメールで届きます。登記簿謄本は**電子ファイル(PDFスキャン)**で添付できる場合もあります。
まとめ:社会保険の加入届をスムーズに進めるために
社会保険の加入届は、適用事由発生日から5日以内という社会保険の中で最も短い期限があります。開業準備の段階から以下のポイントを押さえておきましょう。
- 法人設立日・5人目採用日がトリガー:その日から5日以内が法定期限
- 被保険者資格取得届も同時提出:従業員ごとの書類を同時に準備
- 法人は登記簿謄本(90日以内発行)を先に取得しておく
- 算定基礎届(毎年7月)のカレンダー登録を怠らない
- 労働保険(10日以内)との同時スケジューリング
手続きに不安がある場合は、社会保険労務士への相談が有効です。費用は初回の新規加入手続きで3〜5万円程度が目安です(事務所により異なります)。
許認可ナビ編集部
行政書士・法務専門家と連携し、許認可・行政手続きの正確な情報を提供しています。掲載内容は官公庁の公式情報をもとに作成し、定期的に更新しています。
最終更新:2026年4月29日
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